2023-01-01から1年間の記事一覧

2022年7月 本/言葉2

「記憶というのは、思い出されるごとに独自のものになるんだ。絶対的じゃない。実際の出来事をもとにした話は、しばしば事実よりも創作と重なるところが大きい。創作も記憶も、思い出され、語りなおされる。どっちも話の一形態だ。話という手段を介して、人…

2022年7月18日 身内の芝居の感想

話に引き込まれないと、せっかくの役者の熱演もただただ目障り耳障りなものになってしまうのだなというのを、先輩たちが結成したユニットの公演を観て思った。本当は身内に対してあまり厳しいことは言いたくないのだけど、面白いと思えるポイントが一つもな…

2022年 4月17日 本/言葉

性欲ではなく、執着なのである。リカに、自分を認めてほしい。リカが何かを見て美しいと思った時に、必ず自分のことを思い出し、自分とその美しいものをわかちあいたいと感じてほしい。リカが何かを伝えたいと思った時に、まず最初に自分に言いたいと思って…

2021年10月18日

彫刻の森美術館に行った。自然と彫刻との調和が心地よい場所で、ヘンリー・ムーアの彫刻に見とれていた。丸くて抽象的で、でも生きているような彫刻を前にして、じんわりと温かい気持ちになっていくのを感じた。

2021年8月24日 万年筆に嘘はつけない

万年筆のインクを調達した。以前セーラーのカートリッジを買ったけれど型が合わず、すぐさま引き出しの中行きとなってしまったので、今回は瓶に入ったインク、コンバーターで吸い上げるタイプのものを買ってきた。しかし、手先が不器用な私にとってコンバー…

2021年5月25日 雨に誘われ

雨に誘われ、トリエステの坂道のページをめくる。じっくりと時間をかけて読んだ一冊は体の中に溶け込み、感性の一部となる。 雨が激しくなった。ペッピーノが自分の傘をトーニにさしかけると、彼は、いいよ、いいよ、というように頭をふって、手にもったカー…

2021年1月22日 夏の手

祖母は私の隣で、皴のある手で器用にカッターナイフを使い鉛筆を削っていた。 祖母の家は高知にある。周りを山と田んぼで囲まれたそこは、とにかく緑が目に眩しい。幼い頃は毎年夏休みに祖母の家を訪ねていた。長いこと電車に揺られ疲れ切った私と妹と母を、…

2021年1月5日 体

すとんと落ちすぎている肩。大きくはないけれどそれでも確かに丸みを帯びた胸と厚みのある下半身。曲線で形作られている体。それはつまり、私が女であるということ。 体の形だけではない。体の内で生じる変化も私が女であるということを突き付けてくる。月に…

2020年2月10日 宝石になる

何者かになりたくて、今のままじゃダメだもっと遠くにいける、と信じて疑わない真っ直ぐさゆえの不器用さ。レディ・バードはきっとどこにでもあるありふれた物語なのだろう。 本当は大好きなはずなのに、素直になれなくてお母さんと喧嘩しまくったり、かっこ…

2020年3月6日 目まぐるしい

神保町でパンケーキを食べてから六本木で映画を観て、最後は飯田橋で焼肉を食らう。 日比谷の道のど真ん中でタクシーをひっ捕まえて六本木に飛び、ギリギリ辿り着いた映画館でミッドサマーを所々笑いを噛み殺しながら観ていたら、隣で観ている先輩も笑いを噛…

2019年2月2日 春の夜

川沿いを歩く男女。2人とも手に缶ビールを持っている。 女「プーさんって」 男「うん」 女「なんだか蒸しパンみたいじゃないですか?」 男「え?」 女「プーさんって、普段はあの名前が入った赤いシャツ着てるから分からないんだけど、脱がすと黄色くてほわ…