2022年7月18日 身内の芝居の感想

 話に引き込まれないと、せっかくの役者の熱演もただただ目障り耳障りなものになってしまうのだなというのを、先輩たちが結成したユニットの公演を観て思った。本当は身内に対してあまり厳しいことは言いたくないのだけど、面白いと思えるポイントが一つもなかったため、お世辞で面白かったと言うのも逆に心苦しく、アンケートに少し厳しめな感想を書いてしまった。本当につまらない作品というのは、記憶の隅にも残らないものである。面白くなかった!と思っても、観た後にブツブツ文句を言いたくなったりするようなものは、自分の中で引っかかるポイントがあったということであり、実は結構面白かったということなのだろう。話が少しそれてしまったけど、今日観た芝居は前者だった。

 そもそもよく知っている人が舞台上でたとえその人の普段のキャラクターとはかけ離れた役を演じていたとしても、こちらとしてはやはり普段のイメージが深く刻み込まれてしまっているため、どうしても役として見ることができないのだ。まずそれが、話に入り込めなかった第一にして一番の原因だ。

 第二に話の全体像が掴みにくかった。登場人物たちが抱えるそれぞれの葛藤が上手く描ききれていなかったような感じがしたし、それぞれの葛藤が交わっていくわけでもなかったので、全体として取っ散らかった印象を受けた。テーマは分かりやすくまあまあ共感できるものだったけれど、ストーリーの説得力が薄かったため、結果としてテーマもぼやけてしまっているように感じた。

 第三の原因は役者の演技だろう。最初に書いた通り、話に入り込めなかったから役者の演技にも魅力を感じなかったというのはあるが、泣いたり叫んだりの演技があまりにも多すぎた。メリハリがない、とでも言えようか。私が感情を爆発させるような演技があまり好きではないというだけで、これはもう好みの問題なのかもしれない。しかしにしても、泣いたり叫んだりの裏にある葛藤がイマイチ見えてこなかった。話に入り込めていたら見えたのだろうか。

 小劇場での公演で3,000円は安い方だと思うが、身内だから出せた3,000円であり、身内でなかったら出す価値があるかどうか考えてしまう3,000円だろう。先輩方が今後どのようなスタンスでやっていくか知らないけれど、もしこれから身内だけでなく演劇が好きな多くの人たちにも観て欲しいとお考えならば、今回のような公演は、先に挙げた原因その1を抜いたとしてもなかなかにキツいものがあるのではないかと思う。

 ずいぶん偉そうなことを書いてしまったけど、身内でもあの内容で3,000円が飛んで行ってしまったのは少々痛い。なので、なぜつまらないと感じたのかを書かずにはいられなかった。この文章を書いていて思ったのだが、今回の公演の評価を少し上げることができるとすれば、それは実は今回の公演が記憶の隅にも残らないつまらないものではなく、自分の中で引っかかるものがあるつまらないものであったということだろう。次回は(やるとするのならば)面白い作品を観ることができたらいいなと思っている。